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自閉症とは
自閉症は、これまで先天性の脳の機能障害とされてきました。
そのため、治療には脳の異常な興奮を鎮める薬が使われており、療育の方法は、主に脳へのアプローチが行われていました。しかし、残念ながらこのような治療法を続けていても根本的な解決には至らず、症状の改善につながっていないのが現状です。
ところが、最近の研究で、自閉症は腸内環境に密接に関係していることが明らかになってきました。
自閉症と腸内環境がどのように関係しているのか、2つデータをもとにお話します。
自閉症の人の腸内環境
抗生物質で腸内環境が悪化
まず1つ目は、乳幼児期に長期にわたって抗生物質を投与された子どもに自閉症の発症者が多いということです。
抗生物質は、腸内環境に悪影響を及ぼすとされており、抗生物質を体に入れれば入れるほど、腸内細菌が殺されてしまうのです。
なんと自閉症の子供はそうでない子供に比べて3倍以上もの抗生物質が投与されています。これでは腸内環境が悪化するのは当然でしょう。
抗生物質を大量に投与された自閉症患者がが腸内環境を良くする食生活を徹底することで症状が大きく改善した症例は多数報告されており、腸内環境の改善が自閉症改善に繋がると言えます。
腸もれが起こっている
2つ目は、自閉症患者は「腸もれ」が起こっている可能性高いことです。
米国カリフォルニア工科大学のイレイン・シャオ博士は2013年、世界的科学雑誌「セル」に自閉症の症状を引き起こす物質を見つけたという報告しました。
シャオ博士は、コミュニケーション能力の低下した「自閉症マウス」を使って、その原因がクロストリジウムという腸内細菌が作り出した「4EPS」という毒素が、腸内から漏れていることを発見しました。
そして、「漏れる腸」を治療すると、「4EPS」が体内に侵入するのを防いだと報告したのです。人間で調べてみても、確かに自閉症者は、血液中に「4EPS」が増えていることがわかっています。
また、「腸もれ」の治療に使われた整腸剤は、腸内細菌の一種でした。バクテロイデス・フラジリスという菌で、腸壁を整え、バリア機能を高めてくれる働きを持っています。マウスに自閉症をもたらす毒である「4EPS」をつくっているのは腸内細菌ですが、その毒が体内に侵入しないようにするために腸の壁を整えるのもまた腸内細菌の役割なのです。
腸内細菌のみならず腸内環境の悪化は、自閉症の症状に関係があると言えるのではないでしょうか。
まとめ
いかがだったでしょうか。
腸内環境の悪化が自閉症に繋がるというのは意外に思われますが、様々な臨床結果がそれを示唆しています。
腸内環境を整える食事を習慣にしていきましょうね。
執筆 東京医科歯科大学名誉教授 藤田紘一郎
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