妊活という言葉が出てきたのはいつからでしょう。
ひと昔前であればそういった言葉は存在していませんでした。
その背景として「不妊」という現実があるからのように思います。
現在日本における不妊治療の件数は、年々増加しています。
女性の社会進出に伴い高齢化出産が進んだことが原因の一つと言われていますが、
それだけでなのでしょうか?
今日は不妊の実態と、不妊と関連した栄養素・食事について触れたいと思います。
目次
不妊症とは
日本における不妊症の定義は、「結婚した夫婦が赤ちゃんを欲しいと思い、一般的な夫婦生活を行っているにもかかわらず、1年以上赤ちゃんを授かる事ができない状態」とされています。
日本産婦人科学会はこの期間を「2年」から「1年」に短縮することを2015年に発表しました。
赤ちゃんが欲しいと思っているにもかかわらず、1年間妊娠しない場合は、不妊症ということになるのです。
日本の不妊治療の実態
現在日本では6組に1組の夫婦が不妊治療を行っており(国立社会保障・人口問題研究所調べ)、
1992年に1万8千件であった不妊治療件数は、2016年には44万7,790件に登っています。
このうち無事生まれた赤ちゃんは、なんと5万4,110人。成功率は10%ほどです。
実はこの成功率は世界最下位。
つまり、日本は「世界一不妊治療で妊娠できない国」と言えることもできるのです。
一体なぜでしょうか?
不妊の体内環境
卵子が酸化している
それでは栄養学の観点で、不妊の方の体内環境について触れたいと思います。
不妊の方の体内環境として言えるのは、身体中の細胞が酸化しているということです。
「不妊女性の多くは卵子が酸化している」と産婦人科医も指摘しています。
その酸化の大きな原因は、糖質過多。
糖質過多とは、ご飯、パン、パスタ、ラーメン、うどん、甘いお菓子などの炭水化物や糖質の摂りすぎのこと。これらの摂りすぎは、身体を酸化させます。もっとはっきり言えば、糖質過多は卵子の酸化、精子の奇形や精子数減少に繋がります。
20代、30代で不妊治療を行っている方の卵巣年齢が50代という方が多くいらっしゃるのも、身体の酸化が原因と指摘することができるのです。
血糖値の乱高下が激しい
不妊の方に多いのが、血糖値の乱高下が激しいことです。
糖質を摂りすぎると高血糖と低血糖を繰り返し続けます。それによって低血糖症という症状が出るだけでなく、タンパク質と糖が結合して変性する「糖化」が引き起こされます。
糖化は卵子の老化を引き起こすだけでなく、体外受精の成功率が下がると言われています。
糖化を避けるためには血糖値の乱高下を起こさないよう、血糖値を極端に上げないようにする必要があります。具体的には血糖値を急激に上昇させるジュース類、精白した砂糖や小麦粉などの炭水化物・糖質を食べ過ぎないようにすることです。
抗酸化物質が不足している
2点目に抗酸化物質の不足が挙げられます。身体の酸化を防ぐためには抗酸化物質が必要です。
抗酸化物質とは野菜や果物に豊富に蓄えられている、ビタミンやミネラル。
ビタミン・ミネラルの不足は不妊のみならず様々な病気に関連しますが、実は生殖機能にもかなりの影響を及ぼしています。酸化が進むと卵子の老化を引き起こし妊娠しずらくなるだけでなく、流産率が高まり、また女性だけの話ではなく男性の精子の質にも大きな影響を与えるのです。
一部の産婦人科では不妊治療の一環として抗酸化栄養点滴を行うことで妊娠成功率を上げている産婦人科もあるので、そういったことを行うのもひとつですね。
体温が低い
体温が低く血流が悪いことも不妊女性の特徴です。
体温が低いと免疫が弱くなり、がんの原因になることは別のページで説明しましたが、実は妊娠力にも影響します。
基礎体温が低いままという状態は排卵が起こっていない可能性があり、その状態が続くと妊娠できませんし、排卵していたとしてもその状態では受精卵が着床しづらくなるのです。
体温を上げるには湯船にしっかり浸かることや足湯に入るなど物理的に熱を入れるだけでなく、身体が熱を出すための栄養をしっかり摂る必要もあるわけです。
痩せすぎ・太り過ぎ
これは特に20代の不妊女性に言えることで、痩せすぎ・太り過ぎの方は妊娠力が低下する傾向があるようです。
ハーバード大学の研究によると、BMIが20〜24が妊娠するには最適とされていて理想は21。それ以上高くても低くても卵巣年齢が低下。また体脂肪が17%を下回ると生理が止まる可能性があり、妊娠どころではなくなります。
ある程度の体型を維持する事も重要ということですね。
不妊女性が控えるべき食事
糖質だらけの食事
不妊女性が控えるべき食事について触れていきます。まずひとつめは糖質。
糖質制限は糖尿病やがんの食事療法でよく行われますが、妊娠のためにもとても有効です。上記で説明させていただいた通り、糖質制限をすることで卵子の酸化、血糖値の乱高下、糖化、低体温を改善することができます。
不妊の方の食事を一週間確認したところ、ほとんどの方が1日の食事の8割以上が炭水化物と糖質を口にしていました。これでは妊娠しやすい卵子や妊娠しやすい子宮内膜が作れませんので、体外受精や顕微授精を試みても成功率は高まりずらいでしょう。
マーガリン・ショートニング
ファストフードや菓子パンに多く使用されているマーガリンやショートニングも妊娠を望む方には危険な油です。なぜならこれらには「トランス脂肪酸」という油が含まれているからです。トランス脂肪酸は「トランス型」という自然界には存在しない分子構造をしており、これはプラスチックの分子構造と同じことから「食べるプラスチック」とも言われています。
実はトランス脂肪酸に摂取の量が増えるほどに排卵性の不妊が増えることがわかっているのです。卵子の細胞膜も油が材料なので、健全な卵子を作るためにも、危険な油は避けたほうが賢明です。
海外ではこのトランス脂肪酸を規制している国が増えているものの、日本は「一人当たりの摂取量は大したことないので問題ないと思われます」的な見解です。しかしどの食品にどれだけのトランス脂肪酸が入っているのかは基準はあるものの食品によりますし、いまいち明らかにしにくいのが実態。実際自分が食べたトランス脂肪酸量は容易に計算できないし、外食やお弁当で1食あたり0.5gを超えるトランス脂肪酸を含んでいることもあるので、今はリスクを理解した上でできるだけ避けるようにすることが必要なのです。
過度な食品添加物
過度な食品添加物も控えるべきです。
添加物や農薬、化学薬品などは肝臓で解毒されますが、解毒するための栄養が足りていないと毒素として体の中に蓄積されてしまいます。恐ろしいことに、女性の場合、その毒素は子宮にも蓄積されるのです。
毒素が身体の中に溜まっていると妊娠力は低下します。現在では妊活サロンと唄うサロンが増えていますが、必ず身体の毒素をデトックスするメニューを組み込んでいるのも、毒素が溜まっていると妊娠しずらいという理由からです。
不妊女性が摂るべき栄養
タンパク質
それでは不妊女性が摂るべき栄養素を上げていきます。
ひとつめはタンパク質。
タンパク質は体づくりの基本栄養素です。タンパク質は分解するとアミノ酸になりますが、人間の身体は20種類のアミノ酸が様々に組みわされて何千種類というタンパク質が体内で合成され、身体の臓器となったり、ホルモンや酵素になっています。しかもアミノ酸は長時間体内でプールできませんから、毎食の中できちんと摂る必要があります。
不妊女性の方の食事は8割が炭水化物・糖質であったことを前述しましたが、赤ちゃんの臓器や皮膚などを作っていくためにはタンパク質という材料が足りていなければ赤ちゃんは健全に成長できません。タンパク質に限った話ではありませんが自分が食べているものが自分と赤ちゃんを作る材料になっていることを意識し、卵・肉・魚・豆類・乳製品などをしっかり摂取しましょう。
ミネラル
人間の身体の3%は微量ミネラルで構成されています。
たった3%ですがこのミネラルこそが「体内のph調整」や「デトックス」や「細胞代謝」に重要な役割を果たしており、不妊の方の「卵子の酸化」を改善させるのにもかなり有効なのです。
妊活の際に摂らねばならない代表的なミネラルは「亜鉛」や「鉄」と言われています。もちろんこのミネラルは重要ですが、その2種類だけでなく様々な種類のミネラルを摂取することをおすすめします。ミネラルは野菜や果物に豊富に含まれているので生野菜をたくさん食べましょう。その際には是非、無農薬のものにこだわってください。農薬は毒素です。せっかく摂取したミネラルが農薬を解毒するために使われてしまうのを避けるため、質のいい無農薬野菜でミネラルを補給しましょう。
良質な脂質
不妊の方は卵子が酸化していることを前述しましたが、その原因として糖質過多だけでなく、「酸化した油の摂りすぎ」の可能性もあります。
酸化した油の代表はマーガリン・ショートニング・サラダ油などです。これらを摂取すると活性酸素が発生し、体内で臓器を傷つけ老化させ様々な病気の原因になります。大事なことは、「酸化していない・しにくい油」を摂取することです。
おすすめはココナッツオイルです。ココナッツオイルは6割が中鎖脂肪酸でできており、酸化しずらいだけでなく、母乳にたくさん含まれているラウリン酸が豊富で殺菌・抗菌の役割を果たしてくれます。加熱しても酸化しずらい油なので料理に活用してたくさん摂取することができます。
また、卵子の酸化を抑え、しなやかな卵子の細胞膜を作ってくれるEPA・DHAの魚の油もおすすめです。この油は非常に酸化しやすいため、できれば加熱せずにお刺身で補給するか、それが難しければサプリメントで補うのも良いと思います。
ビタミンD
海外の研究では30代の不妊女性に共通して不足しているのがビタミンDであることがわかっています。
ビタミンDとは、コレステロールを材料として、日光を浴びることによって体内で合成するというちょっと珍しいビタミンです。脂溶性ビタミンで、食事から補うこともできます。
ビタミンDは肝臓、腎臓を経て活性型ビタミンDに変わり、様々な役割を果たします。不足すると歯や骨の形成がうまくいかなくなったり、赤ちゃんや子どもではくる病、成人では骨軟化症を引き起こすとされていますが、最近の研究ではビタミンDを補うことでがんの予防、感染症の予防、2型糖尿病の予防の可能性があり、子宮・卵巣・精巣・精子にもよい働きをすることがわかってきたのです。
現代人のビタミンD不足の原因は、美白志向によるUVカットによって紫外線に当たることを避けていることや、ビタミンDを多く含む魚類をあまり食べなくなってきていることが原因であると考えられます。
ビタミンD合成のためには春夏は15〜20分ほど、冬は40分ほど直射日光に当たると良いとされていますので、晴れている日はどんどん外に出て太陽の光を浴びましょう。また、ビタミンDを含む食材を食べる方法ももちろんあります。ビタミンDが含まれている食材は、「卵」「きのこ類」「魚」などです。通常の食事で過剰症になる心配はないと言われていますので神経質にならずにしっかり食べましょう。
葉酸
葉酸は、ビタミンB群の一種で、妊活、妊娠中共に摂るべき栄養素として有名な栄養素です。特に妊娠初期の女性には摂るべきとされていて、妊活・妊娠中女性のための葉酸サプリはたくさん販売されていますね。
葉酸がなぜ必要なのかと言うと、母体に葉酸が不足していると赤ちゃんの細胞が未完成の状態となり、先天性異常が発生する可能性が高まるからです。葉酸は細胞の生産や再生を助けて体の発育を促したり、赤血球の生産を助ける役割を持っていますので、妊娠前から葉酸をしっかり摂っておき受精後の細胞育成に備えることが大切です。
葉酸は緑の野菜に多く含まれているため、ミネラルの補給として無農薬野菜をおすすめしましたが同時に葉酸も摂ることができます。不足が気になる方は葉酸サプリで補うのもいいと思います。
低体温を改善するには
低体温を改善するには、しっかり湯船に入ること、足湯に入ること、温熱機器で温める、着込むなど様々ありますが、実は上記のように栄養をしっかり摂っていけば基礎体温が自然と上がるという例がたくさんあります。
なぜなら熱を出すために必要な栄養素を補えば細胞内のミトコンドリアが正常に働きしっかりエネルギーを出し始めるからです。冷えていると自覚のある方はただ着込むだけではなく、栄養素を補ってみてください。卵子の酸化や糖化を抑えるだけでなく体温も上がり受精・着床しやすい体ができていきます。
ミトコンドリアのエネルギーの出し方の詳しい内容はガンは低体温で増殖する?|身体を温めミトコンドリアを元気にしよう!で紹介しています。
糖質制限で精子が変わる
男性の精子の量と運動指数を示す数値としてSMIという数値があります。
糖質制限の食事法により、このSMIが飛躍的に伸びたということを宗田マタニティクリニックの宗田院長が発表しています。宗田医師の指導のもとで糖質制限を行ったところ、どの男性も3ヶ月〜6ヶ月の間にSMIが7倍〜10倍に伸びたそうなのです。
「妊活」や「不妊」と聞くと、なぜか女性の方だけに問題があるのでは?というイメージがありますが、それは大きな間違いです。女性だけでなく男性も食事を見直すことが重要と言えます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
赤ちゃんが欲しいと思った時にスムーズに妊娠できることは幸せなことだと思います。
妊活に栄養療法、できることから是非取り入れてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。