がん細胞は、私たちが考えるほど簡単には倒れません。
最新の抗がん剤や分子標的薬の登場で治療の選択肢や可能性はどんどん広がっているものの、最近の研究ではブドウ糖の供給が途絶えてもがん細胞の3割は生き残ることが明らかになってきています。
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乳酸がエネルギー源
がん細胞は、糖質が大好物であり、糖質制限をすることが治療の第一歩であることは多くの研究で明らかになっています。
しかし、がん治療の専門家は「がん細胞はとにかくしつこい。
治療しても、治療しても生き残ろうとするので決して気が抜けない」と指摘します。
実際に、糖質制限をしてがんの栄養源であるブドウ糖の供給を絶ったとしても、7割は死滅しますが、残りの3割はブドウ糖に代わる栄養源を求めて生命をつなごうとする習性があるとされています。
同じ薬を飲み続けていると「耐性」ができて徐々に効かなくなるのと同じように、がん細胞も糖質に対して「耐性」があると考えられており、糖質制限に対する耐性をもつことで生きながらえる術を身につけたのかもしれません。
そうした生き残ったがん細胞は、どんな栄養源に触手をのばすのでしょうか。
最近の研究でわかって来たのは、解糖系の生成物質である乳酸をエネルギー源としているのではないかとする説です。
がん細胞周囲の酸性化が進む
乳酸というと、スポーツ選手が激しい運動をすると「乳酸が溜まる」というように、筋肉疲労を起こす悪い物質だと考えられています。
しかし本来は、筋収縮を阻害することを防ぐ働きがあると言われ、むしろ疲労を防ぐ物質であることがわかっています。
また、血管新生や傷の修復促進、ミトコンドリア(酸素を利用してATPを産生する)新生、遺伝子発現調節などの働きがあるとも言われており、乳酸にはプラスの効果があることもわかってきています。
しかし乳酸が増えるとがん細胞の周囲の酸性化が促され、正常細胞に大きなストレスを与えます。その結果、がん細胞に対する免疫作用が低下し、浸潤や転移が起こりやすくなるとされています。
医学と栄養学の総力戦で挑む
こうしたことから、乳酸を増やさない、または抑えることが、がん細胞への栄養源を断つことにも繋がるわけですが、その重要な働きをするのがケトン体とも言われています。
ケトン体には、がんの増殖を抑えるだけではなく、乳酸を排除する働きがあることがわかっています。
普段から糖質制限をし、体の中のケトン体の数値を高めておくと、ブドウ糖の代替となりうる乳酸を増やさず、がん細胞に取り込まれない働きをするとされています。
しかし、それでもなおしぶとく生き残るがん細胞もあるようです。
自らの体質を体内環境の変化に適応させ、ケトン体をも栄養源にしてしまう、それほどの執拗さを持ったがん細胞もあるとか。
まさにがん治療は、こうした網の目をかいくぐるがん細胞との、ある種の頭脳戦ともいえます。
根治するには、医学的な治療法の選択と、体の栄養状態をいかにがん細胞の栄養源にならない状態に保つかもきわめて重要な要素。
普段の食事や栄養バランス、そして運動にも気を配りながら、総力戦で臨むことが求められるといえます。
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