サンマやサバ、イワシなどの青身魚には、オメガ3系の脂肪酸であるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)が多く含まれていることはよく知られています。
EPAやDHAは、ともに脳血管系の病気を予防または改善する働きがあることが、最近の研究でわかってきています。
EPAは血液をサラサラにする作用や脳の働きを活発にする一方、DHAは記憶力を向上させたり、物忘れや認知症を改善するなどの作用があるといわれています。
しかし栄養価が高いのは、青身魚だけではありません。
サケやカニ、エビなどの身が赤い魚介にも、私たちに欠かせない重要な成分が含まれているのです。
それが「アスタキサンチン」という物質です。
アスタキサンチンは、自然界に存在する天然色素で、強い抗酸化成分を持っているとされています。
では、私たちの体にどのような良い影響をもたらすのでしょうか?
目次
アスタキサンチンってなに?
アスタキサンチンは、サケの切り身やイクラ、カニ、エビ、タイなどの魚介に含まれる赤色の色素。
もともとは、カボチャやニンジンなど緑黄色野菜に豊富に含まれるβカロテンと同じで、自然界にあるカロテノイドという色素の一つとされています。
カロテノイドは、主に野菜や果物などに含まれる黄色、橙色、赤色の色素類の総称。
トマトに含まれるリコピンもその一種で、βカロテンやリコピンなどには、がんや老化などの予防効果も期待されています。
色がついた野菜や魚介は、カロテノイドという栄養価が高い色素だと覚えておくといいでしょう。
その栄養価ですが、アスタキサンチンには驚くほど高い抗酸化力があるとされています。
一説にはビタミンC の6000倍、ビタミンEの1000倍ともいわれ、まさに自然界から得られる成分としてはナンバー1といってもいいほどです。
サケは、アスタキサンチンで守られる
ところでサケは、赤身の魚だと思って食べていませんか?
実は、サケはもともと白身の魚だといわれています。
サケは川の上流で生まれ、成長しながら海を回遊し、産卵のために再び故郷の川に戻ってきます。
産卵のシーズンになると、サケが川を遡上する姿は、テレビのニュースなどでもよく見かけますが、産卵に至るまでの運動量はとても激しく、サケはその過酷な運命に立ち向かうために、普段からアスタキサンチンを含むオキアミを餌として取り入れ、体に備蓄しているといわれています。
産卵の時に、アスタキサンチンを卵に移管して浅瀬に産みつけ、生まれてくるであろうDNAを紫外線の害から守っているといわれています。
産卵を終えたサケは、長い旅路を終えて、ボロボロになって朽ち果てていきます。
イクラが赤いのは、サケが命をかけてアスタキサンチンを引き継いだ証しでもあるのです。
アスタキサンチンの栄養パワー
アスタキサンチンのもう一つの特徴は、青身魚に含まれるDHAと同じように、血液脳関門を通過する成分だと言うことです。
血液脳関門とは、いってみれば血管から脳へ入る物質の通り道。
ここに入る栄養素は限られており、DHAやアスタキサンチンはこの関門を通り抜けて脳に届くため、神経細胞の膜成分になりうるとされています。
DHAが、認知予防や記憶力の向上に作用すると言われるのもここに理由があります。
アスタキサンチンもDHAと同様に、細胞を覆っている細胞膜を通り、細胞膜の中から酸化の連鎖を食い止める力を発揮できるとされています。
一方でアスタキサンチンは、脳を活性酸素から守る働きがあり、これが生活習慣病対策にいいと考えられています。
医学的には、たとえば眼精疲労はアスタキサンチンを摂取することで改善される、または糖尿病性腎症を抑制する効果などの報告もあるようです。
これらの効用は、いずれもアスタキサンチンが、目と脳の血管を通過することから得られていると考えられています。
まとめ
むかしから魚介類を多く摂取してきた日本人には、赤身や青身の魚は身近で手軽に食べられる格好の食品です。
赤身の魚介には、抗酸化作用や眼精疲労、生活習慣病対策に良いとされるアスタキサンチンが多く含まれている。
青身魚のEPA、DHAは、オメガ3系の良質の油で体に欠かせないだけではなく、脳血管系の病気の予防や改善に役立つことがわかっているとなれば、これまで以上に積極的に摂るべきではないでしょうか。
専門家によると、魚介は「週5日は食べても大丈夫」だそうで、冬場は特に魚介類が美味しくなる季節。赤身の魚介をみたらアスタキサンチン、青身魚は、EPA、DHAと口ずさみながら、家族で食卓を囲むのもいいのではないでしょうか。
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