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病院のNST(栄養サポートチーム)は 何をするチームか?
大学病院や拠点病院など、比較的大きな病院で活躍するNST(栄養サポートチーム)をご存じですか?NSTは、各診療科の医師や看護師、栄養士、薬剤師、言語聴覚士など、栄養学を学んだ多職種が集まり、それぞれの立場から意見を出し合い、入院中の患者や在宅の患者がより良い栄養状態を保てるようにサポートするチームです。
チーム医療が浸透している今、文面だけを捉えれば、医療機関が患者の栄養についてチームで取り組んでいると思うかもしれません。表面的にはそうなのですが、各病院がなぜNSTに取り組むのか。その理由や背景を知ると、医療機関の栄養に対する認識の一端が垣間見えてきます。
NSTとは、臨床栄養学の実践と啓蒙を目的とする運動で、1970年にアメリカ・シカゴで始まったとされています。この活動が生まれた背景には、当時入院中の患者のおよそ3人に1人は栄養状態が十分ではなく、栄養治療が必要であるにもかかわらず、医療人がその事実に気づかないまま「放置されてきた」現実があります。
日本でも、同じように医療現場の栄養に対する認識は低く、「お年寄りで寝たきりだから栄養は少なくていい」とか「手術や病気の時は、普段より栄養がわずかしか与えられない」とか間違った認識が横行した時代が続きました。
こうした反省から、日本では1990年ごろからNST活動が始まり、医師を対象とした臨床栄養講習会やTNT(Total Nutrition Therapy)が設立されました。TNTで栄養を学んだ医師がNSTドクターとして認定され、患者の栄養評価を行う仕組みがつくられます。現在では、日本静脈経腸栄養学会が認定する「NST専門療養者制度」があり、この資格試験を受けて受かった人がNSTのチームの一員になっています。
栄養の専門医が指摘する現実
さて問題は、ここからです。私たち一般人からすると、入院患者の健康状態、栄養状態は、少なくとも現場の医師や看護師は把握しているはずだと思っています。しかし実態は必ずしもそうではありません。
北陸のある大学病院のNSTの担当医に聞いた話によると「院内の医師で栄養について知らない人間はたくさんいる。過去にはそれが治療の障害になっていた」と打ち明けます。そもそもなぜ専門の機関までつくって、現場の医療スタッフがNSTによる栄養評価を受けなければならないか。その理由はここにあります。すなわち、患者の栄養状態が悪いために、治療がなかなか進まない。そういうケースはいまだにあるというのです。
NSTが活躍する大学病院や拠点病院は、いってみればその地域で最高の医療を受けられる医療機関です。診療は臓器別に専門に別れ、消化器や循環器、脳、肝胆膵、泌尿器、整形、小児科などそれぞれ専門医が揃っています。先進の設備機器やIT化により、高度で先進的な治療を行える環境にあります。
それなのに現実は、患者の栄養状態、健康状態を正確に把握していないとしたら、そもそも医療者にとって栄養とはどういうものなのでしょう。臨床栄養学と言う栄養学を学び、一般人よりは栄養に精通しているはずの専門家たちが、患者の栄養状態を見逃がしているのです。これはかなり衝撃的だと思いませんか?
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